まだ肩が痛むので刀の火造りは昼迄。午後は弟子が包丁の火造りをするが物覚えの悪い弟子に火造りをさすと包丁がダメになるので中止にして他の弟子に変わる。職人は炭を最小限にして手早く打ち上げねばならない。どの弟子も時間をかけてすれば出来るがそれでは採算が取れない。やはり弟子は若くないと物覚えが悪い。持って生まれた器用性もある。趣味であれば楽しいがこれで生活をするとなれば厳しい。物覚えの悪い弟子をどの様に指導すれば良いのかと悩む。包丁が出来なければ刀造りに入れない。いつ迄高価な松炭と自家製玉鋼を使うのか、命がけで修業をしているとはとても思えない。その中にあって順調に技術を伸ばしているのが山田君一人である。彼は全てを捨て日夜刀造りに励んでいる。この様な弟子でなければ刀鍛冶になれない。刀工試験に合格した弟子も3人に1人しか専業の刀工として生活が出来ていない。日本の文化と伝統を守る強い意志がなければ生きていけない。