桜も終わると山々は薄緑におおわれ夏が近づいた事を感じる。親指の筋2本を切って今日で44日。刀工生活41年でこれほど長期間刀造りを休む事はなかった。あと52日間リハビリ、筋力トレに頑張って指を元の状態に治したい。リハビリで毎日昼食前後まで病院。その後鍛冶場で左手の作業での包丁造りは弟子の手を借りねば進まなく遅々としたものである。それでも鍛冶仕事から少しでも離れたくなくあの鋼の沸いた瞬間は何物にも代えがたい光景である。そしてたたら製鉄で砂鉄を吹き鋼を取り出す心躍る時は最高の生きがいを感ずる。日本の文化と伝統を守り日本刀の地金の変化と斬れ味を求める尽忠報国の刀工養成の場で意を汲んだ者はわずか3名、他は破門。後幾人私の考えに沿う者が残るか。刀を造る前に日本人としての精神を造る事が先である。