朝4時の岡山県護国神社の参道はみたま祭りの提灯が大鳥居から御本殿まで明るく続く。御本殿で大東亜戦争で国家の為に一命をささげ散花した御英霊に感謝の誠を祈念する。鍛冶場では鋼の試作包丁を火造り2本を焼き入れ、研ぎは明日にしてK君の折り返し鍛錬の見学。
鍛冶場に住み込んでいる弟子が墓参りの為に帰り無人なので一人作業をしていて熱中症で倒れたら弟子の指導が止まるので中止にして帰宅。今迄2度倒れ、そのしんどさは知っており命が一番大事である。その大事な命を大東亜戦争で国の為に差し出した英霊の眠る靖国神社に天皇も首相も参拝しない不道義国家で良いのか?弟子3名が夜行バスで東京に向かい明日は一門を代表して参拝する。
朝私用をすまして鍛冶場へ。昨日の包丁研ぎで腰、肩が痛むので横たわりK君の包丁の斬味について炭素量以外に焼き入れ温度と水温が私と違っていたのではないかと思ってみるが小板目の鍛え肌は良く出ている。地金に粘りが有っても硬すぎると刃がつきにくいので手間取る。そんな問題を解決しながら刀の地金研究を続ける姿勢が大切である。他の弟子と違うのは守るべきものがある事である。そして日本の文化と伝統を受け継ぐ不屈の信念がある事である。
弟子2名が顔を出して作業。刀を造る事が出来ない弟子は休暇でも刀工修行をしなければ刀工になれない。刀工試験に合格した弟子も私の試験に合格しなければ刀工で生活は出来ない。日本は広い。日本刀造りに生命をかける事が出来る青年もいると思う。日本刀は折れず、曲がらず、良く斬れて尚美しい刃文と地金でなければならない。いつ迄も使えない玉鋼を使わず日本産砂鉄で自ら玉鋼を造らねば日本の文化伝統は滅びる。
8月18日まで夏休みなので鍛冶場は静かであるが私の心臓の調子が良くなれば沢山の注文刀の製作を始めるのでその前に地金の鍛肌の研究をしているので今朝も包丁を鍛えている。一人仕事は楽しいものでゆっくりと研究してたたら製鉄と沸かしの技術を後に続く弟子に残したい。
雨は降らず蒸し暑い朝。弟子5名の前で刀の心鉄と皮鉄を合わせる造り込みを見せる。火力の強い松炭は照り返しの温度も高く汗はしたたり落ち心臓の鼓動も激しくなる。午後は大雨となり涼しくなるが時遅し。
午後は展示室でヨーロッパよりの来客10人に砂鉄より玉鋼を造る工程の説明。質問多し。弟子刀工の沸かしに私と新人のW君が向槌。その後私が包丁の表に土置き。女性の外国人が裏に土置きをして焼き入れをして刃文を完成。今日の作業はヨーロッパ人に大変喜ばれる。夕方にはW君がベルトハンマーを使い沸かしの練習。大雨は降らず。
朝弟子刀工の鍛錬を見るが自己流で私の沸かし温度と違って低温なので鉄の中に空気の入ったふくれが出てふくれを切りながら進めるがふくれは止まず。K君は火の温度が判るのでふくれは出ないので包丁になってもキズは出ない。これから弟子達の試験は合格まで続く事になる。
定休日の朝10時全身汗まみれの作業が終わる。朝5時に期待していた大雨となり急ぎて朝食。9日にヨーロッパから沢山の見学者が来訪するので日本刀包丁の焼き入れに使う2本の包丁造り。外人に人気のある折り返し鍛錬に使う10キロの玉鋼を真赤になる1100度まで焼き一人で20分をかけてベルトハンマーで切断すると暑さで肩で息をしなければならないほど疲れるが刀鍛冶である事に生きがいを感じる時間である。
今朝は弟子刀工が折り返し鍛錬をするので早出。刀の注文が無いので包丁で地金の研究をするので沸かしの温度を見学。小型たたら炉で造った玉鋼は日刀保たたらの玉鋼よりも高い温度で沸かさなければならない。短刀を造るのは刀工でなければならないが包丁は許可が不要なのでK君も鍛錬をした地金に土置きをして短刀に見立てて2本焼きを入れる。秋からは脇差の素延べと火造りへ進み来春の刀工試験を目指している。