心筋梗塞で倒れて以来1年ぶりに涼しい午前中の4時間を刀の地金造りの折り返し鍛錬を続行。心臓の負担は感じないが大事を取って中止として午後は刀工弟子の火造り指導。弟子は刀鍛冶に生活をかけていないのでいつ迄も刀が出来ない。沢山の預金があるのも良し悪しである。
明け方近く迄眠れず秋雨の音を聞きながら今日の予定を考える。早朝は随分と涼しくなったので明日より本格的に刀の地金を鍛えるのでW君の指導をしながら鍛えた包丁の焼き入れ感度を見たかったので定休日でも昼近く迄の作業。弟子が多いと私の作業時間が少なくなるので今しばらくは現在の人員で推移して個人の技術上達を目指し不足する刀工魂を弟子刀工と共に厳しく指導しなければ斬れる刀は出来ない。研究熱心なK君の技術が一番伸びている様である。
朝から新入生のW君が折り返し鍛錬の練習。入門して5か月だが一生懸命に頑張って向槌も打て、沸かしも上手になる。この調子で頑張れば必ず刀工になれる。常に相談出来る良き兄弟弟子もいるので楽しい事だろう。
右足のふくらはぎが痛くてスプリングハンマーのペダルが踏めないのでW君の土置きをした包丁を焼き入れて研ぎ上げる。午後はヨーロッパより12人、東南アジアより2人を前に私が横座に入り沸かしてW君が向槌を打つ。その後も刀剣博物館へ行くも休日なので当所に来る。
新入生のW君が包丁の火造りをして土置き迄進め焼き入れは明日とする。午後は新日本プロレスの藤波選手が来所するので準備。暑い中全員で頑張る事が出来、一門の生き方もBSタイムスの記事で12月号に掲載される。
全員休日なれど弟子刀工は鍛冶場に出て刀の火造り、K君は丹後半島の玉鋼で造った包丁の研ぎをするが在庫も十分なので販売をしたい。定休日でも鍛冶場では包丁2本を火造り、焼き入れをするのでK君は見学。その努力なくしては刀鍛冶にはなれない。アルバイトが本職となり刀修業がアルバイトと本末転倒ではないかと思う。
新弟子が火造り練習用に使う文化包丁の素延べ1本と砂鉄の試作に仕込み杖風に2本の包丁を素延べにする。日中は火を使うとまだ心臓に無理があるので午前中の作業。心臓を守る新たな薬を飲んでいるが無理をしないのが薬。
弟子K君から第3子の出産の報。親子揃って元気な動画が送られてくる。アルバイトと子育て、刀工修行と忙しくなるが元気で頑張って刀鍛冶となり日本の文化と伝統を守る刀鍛冶となって欲しい。折れず、曲がらず、良く斬れて古刀の地金をたたら製鉄で復元して使える日本刀造りに励んで欲しい。
今日の定休日も私が一人鍛錬をする。仕事の出来ない弟子は休み家族サービスでもするのか、週休2日制でいつも休む。だから技術の上達がないのである。仕事が出来なければ休日も休まず仕事をしなければならないがそれをしないのでいつ迄たっても技術が伸びない。刀造りを趣味でしていては本物の刀が出来ないのである。全てを投げ捨てた時に折れず、曲がらず、良く斬れる日本刀が出来る。人並みの生活を望むのは刀が出来る様になってからの事である。
昨日に続き今日も弟子2人の折り返し鍛錬の指導に疲れ果てる。鋼と鋼が溶け始める瞬間に2個の鋼を合わせて鍛着するのは炭の中から出る火花の大きさを見て取り出すが温度が低いと鍛着しないし、溶けすぎると液体になって鍛着しなく失敗をすれば酸化鉄が出て鍛着が難しくなり弟子泣かせの作業である。