朝6時よりK君が私の玉鋼を使って包丁の地金を鍛錬するので椅子に座って見学。沸かしの温度も製鉄所の経験を活かし申し分がなく一門の中では一番の上手であり10時には2本分の包丁を鍛える。午後は1本分の包丁を火造りするもキズは無く土置き、焼き入れと進む。余りにも暑いので後日研ぎをする事とする。
金屋子神社への参拝は膝が痛むため娘と交代運転で出発。宮司様に健康と家内安全を祈願して頂く。毎月片道200キロ余りの道のりを妻と娘の協力で参拝が出来、大鳥居をくぐる毎に今月も参拝に来ることが出来た事に安堵する。
早朝より刀身仕立てをするが午後は西日が入り熱中症になるので中止をして弟子の造った包丁の柄を付ける。研究熱心な元製鉄マンのK君は炎の色と鋼の温度が判り日本産砂鉄で玉鋼を造り日本刀造りの技術を持って日本の文化と伝統を受け継ぐ本物の和包丁職人として私の指導を受けているがそろそろ販売を始める。刀工は文化庁の許可が必要であるが包丁工は親方の承認のみである。私は閣議決定で中小企業庁から優良企業に指定されていて、その弟子のK君の包丁も斬味は良く一生ものである。
今朝も弟子の来る前の5時から炭を切り1時間の折り返し鍛錬。7時から弟子の鍛錬に入るも8時には暑くて修了。夕方迄包丁研ぎの指導。やっと明日は刀身仕立ての作業に入り火を使わない作業になる。
弟子が顔を出す前に早出をして炭を切り練習量の少ない弟子に折り返し鍛錬をさす。弟子刀工と私が指導者となるが弟子刀工は火床の形も沸かしの温度も全く違って自己流となっているので弟子は迷っているので私の流儀に統一しなければふくれやキズが出る。午後はヨーロッパから15人の見学有り。
予備の7寸5分の包丁を研ぎ上げて一休みしていると梅雨明け宣言が出る。まだ注文は残っているが雨の日を利用すれば追加注文も納入出来ると思っていたが早朝出勤を4、5日しなければならなくなる。早朝なら毎日1時間位は折り返し鍛錬が出来るので弟子も見学が出来る。早く注文をすまして本職の刀鍛冶に戻らねばならない。
7寸5分の包丁に土置きをして焼き入れ。南風が吹き涼しい時間帯にベルトサンダーで荒研ぎ。すでに研ぎ上げていた包丁の柄を付け昼食に。休日出勤だったので午後は久し振りに休みする。
小雨が降り早出をして包丁の地金を鍛える。K君が来る前に炭を切り用意をする頃には天気予報に反して晴天に。それでも1時間ほど見学者用に折り返し鍛錬をして用意完了。午後は火造り練習で7寸5分の包丁にして焼き入れは明日となる。連日の早朝作業も今日で終わる。雨が降る日に短刀の火造りをすれば予定はほぼ完了し刀身仕立てのみとなるがもう少し梅雨が続いた欲しいものである。
弟子刀工が包丁体験会を行うのでその前に昨日焼き入れした包丁の荒砥ぎを雨の中で行なう。9時からの体験会を横目に見ながら手研ぎを進めるが暗くては先が見えずらく手間取る。天気予報では後2、3日雨が降りその後は猛暑が続くとの事で週末に外国から10名の見学予約が入ったので包丁の土置きと焼き入れを見せるので2日間位早朝の折り返し鍛錬が必要となる。
夜明け前、庭の木々を鳴らしての大雨に目覚める。慈雨の雨は大地を濡らし鍛冶場に急ぎて向かうが刀身仕立ては暗くて出来ないので7寸5分の外人用の大きな包丁を火造り午後は焼き入れ。長い金筋が走りこの砂鉄の玉鋼は刀向きである。休日に一人仕事は思う存分に作業が出来て楽しいものである。
K君の母親が妻に生計をたくして刀造りに打ち込む我が子の作業風景を見学に来所。親としては気になる事であるが男の一生の仕事を見つけ刀工として生きていくのにはどうしても妻の協力が必要で2人で助け合いながら生きるしか方法がない。両家の両親も幼き子供2人と身重の妻を心配している事と思うが私も妻も同じ道を歩んだので頑張って刀工になる事が愛する妻への最大の贈り物となる。奥さんが一番苦労をしているがなんとか2人で頑張って日本の文化伝統を受け継ぐ夫妻であって欲しいと願っている。
連日暑くなり弟子達はもう鍛錬は出来ないので昨日焼き入れをした包丁の研ぎ練習に入る事にして私は朝5時よりどうしても断れない包丁の地金鍛錬を8時迄続ける。今朝は曇空なのでなんとかなったが雨が降らないともう火を使う作業は出来ない。
早朝の静寂を破り鋼を打つ。私の鍛えた3本の包丁を3人の弟子が火造り土置きをして兄弟子が焼き入れ。今年入門のW君も初の記念すべき焼き入れに感無量にひたる。
朝6時包丁地金の鍛錬。8時2本分作成。昼までクーラーを入れて熱き体を冷やす。昨日は四国行きの刀を仕立て研師さんに出したので今日から中国地方行きの刀の仕立てに入るが仕上げ場には西日が入りて38度の高温になるので3時に中止。空冷の送風機を注文。暑さで刀は造れないが砂鉄の異なる玉鋼3枚を組み立て新たな試作品を6月から造っているが切味は良いので刀が造れる秋迄は包丁が主役となる。
1階で弟子刀工の折り返し鍛錬の試験をしているので2階の仕上げ場は熱し。弟子刀工の弟子も積み沸かしの試験をしているが託児所に預けた子供が熱を出したとの連絡があり急ぎて帰る。身重の妻が働き、子供を預けてアルバイトと刀の修行をする事は大変であるがそれを承知で夫婦で助け合いながら日本の文化と伝統を守る運動に挺身する姿に他の弟子も見習わねばならない。折れず、曲がらず、良く斬れて地金の働きのある維新日本刀への道は厳しい道であり命がけの弟子でなければ務まらない。他の弟子にその気が有るや否や。
朝6時内面応力が抜けて少し曲がった刀を炭火であぶり手鎚で叩いて直す。刀身をやすりで肉むらを削り手研ぎの状態にして中心もせんで削り仕上げる。午後は中心のやすり目を入れて研ぎ師さんに出す予定であったが弟子刀工が鍛錬をする時の熱風が2階の仕上げ場に来るので弟子のな来ない早朝に残す。
定休日は熱中症予防、体力保持のため涼しくなる秋迄休む事にする。平日も朝2時間程の作業が限度。梅雨の大雨が降り外気温の低い日に鍛錬をし梅雨明けは早朝に火造りや焼き入れをして日中は火を使用しない研ぎ仕事で体調を保ち昨年の様に心筋梗塞で倒れる事の無い様にし、弟子達も熱中症にならないように気を付けねばならない。天気予報も暑い日が続くとの事で経験の浅い弟子の体調には注意が必要。
弟子が鍛えた包丁に土置きをして山梨県出身のW君に2本の包丁の焼き入れを見せる。包丁を鍛えたK君に見せる事は出来なかったが3センチ程の長さで金筋が出ており包丁として販売するには少しもったいない気がする。W君とU君は私の包丁研ぎを見て午後を過ごすがT君は風邪をひき寝込む。弟子刀工も鍛えた刀の皮鉄をU型にするのに失敗して大きなクラックを造るが後日私が直す事にして蒸し暑い今日も終る。午後は来客有りて2時間程種々の話をする。
朝1番に松炭150俵を運び入れたので弟子達も大いに使える。折り返し鍛錬と脇差の火造りで1日を終える。徐々にではあるが弟子たちの技術が上がった事が何よりもうれしい事である。
弟子に聞くと今年の刀工試験は9名が受験して2名しか合格していないとの事。今日は先日の弟子に続き残りの弟子の試験も行う。弟子達も技術の上達した者から来年の刀工試験で合格さして刀工養成所の講師にしなければならない。誰も作りえなかった刀工養成所を作り、折れず、曲がらず、良く斬れる真の日本刀を造り愛国心にあふれる青年が日本の文化と伝統を守って行かねばならなく私の人生最後の大事業と思っている。
昨夜も咳が激しく今朝は休みたく思ったが弟子の居ない定休日に磁力の無い砂鉄で造った包丁で竹と紙を切って磁力の有る砂鉄との配合を考えなければならないので包丁を研ぐ。今年の夏は暑い夏と予報が出ているので梅雨が明けると一つしかない命の元、心臓を考えると刀造りは出来ない。日本産砂鉄で1番斬れる刀は経験上兵庫県産出の千種砂鉄と思っているが数人の刀工が集めているので手に入らない。私も日刀保玉鋼の様に硬くなる砂鉄は2トンも在庫があるがどうしてもヘマタイトでは銑気が入るので炭素量低いマグネタイト砂鉄を混合して硬さを下げなければならない。先日の心臓の検査でも徐々に回復に向かっているので秋からはより斬味の良い刀を求めていくので梅雨明けまでは包丁の試作を繰り返し、刀工として独立した折収入の無い生活を支える包丁造りも弟子に教えていかなければならない。
備前長船日本刀製作所
岡山県瀬戸内市長船町長船93
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FAX 086-958-5080
上田祐定