5月6日
風邪気味で休む予定であったが弟子刀工の手抜き作業が気になり午後は鍛冶場へ。案の定8寸程の両刃包丁は火造りで手抜き。ベルトサンダーでも手抜きなのでせんかけは遅々として進まず焼き入れは明日となる。本来は1日仕事が手抜きの為に3日は要する。そのような弟子刀工の弟子があわれである。まず弟子は技術の無い刀工の弟子になる事が間違っていたのである。そして技術力も無いのに弟子を取った事も間違いであった。弟子は刀工になる事に全てをかけているので弟子刀工は真剣であるである。今一門には包丁を造っても刀を造る実力のある刀工が居ない。
5月5日
子供の日は気持ちの良い快晴の空。子供の御守り短刀の注文の打ち始め。日中は暑くなったので午前中の2時間程の涼しい時間帯に鍛錬をして心臓をかばいながら続けていく事とする。午後は刀2振りと短刀の1振りのせんかけを終わり、明日の午後からは焼き入れに使う7ミリ角の炭切りが3日程続きそうである。刀の注文が多く包丁の製作は刀の地金を見るのにサンプルを造るのみ。
5月4日
昨日はヨーロッパ、アジアから20人の外人が見学。今日はイギリスから2名の外人が来訪。丁度弟子が折り返し鍛錬をしていたので日本人と共に見学をして全員が向槌を打ちて、日本刀はアートではなく武士道を学ぶ者が腰の一刀に命を懸ける武術品である事を説明。外人は皆日本刀を武術品として見ている。日本人だけが美術品として外国へ間違った事を宣伝している。目覚めよ斬れない刀を造るアート刀工。
5月3日
弟子刀工が造った玉鋼は松炭に雑木炭を混ぜていた様で火力が不足してとても刀用にはならず。どうも還元作用が理解されていない。卒業した弟子の中にも炭代をけちり雑木炭を使用して炭素量が低く傷だらけの包丁を製作している者もいる。刀造りは玉鋼から始まるので火力のある松炭を使用しないと切れる包丁、刀は造れない。炭代をけちる様では武士の魂は出来ない。
5月2日
昨日の片道200キロ余りの運転の疲れなるか今朝は体中が痛みて休む。帰り道にある米子市の皆生温泉にて入浴して疲れを取らねばもう参拝は無理になる様である。体が続く限り参拝をして折れず、曲がらず、良く斬れて地金の働きのある本物の日本刀を1振りでも多く残したい。後世必ず分析されて日本産砂鉄を使っていたか、外国産砂鉄であったのか現代刀は白日の元に明らかになるであろう。日刀保たたらは砂鉄の産地を開示するべきである。
5月1日
5月の月参りに妻と娘の3人で金屋子神社へ参拝し1日も早く心臓病が回復して1日刀造りに取り組める事を祈願する。倒れてより7カ月が過ぎ随分と体調も良くなり半日位は作刀が出来る様になったが無理をせず弟子の口頭指導をしながらの刀造りを進めている。
4月30日
新入生のW君が左手の抜糸をしたが当分は見学。ヘルメットをかぶり自転車に乗っていたので大事には至らず幸いであった。午後は昨日包丁の焼き入れをしたK君の包丁を研いでみる。焼き入れ温度が高かったようで数度焼き戻しの温度をかけて鋼に粘りを持たせたので斬味は非常に良く連休後半に販売予定。
4月29日
昨日と違ってやっと快晴の空となり刀2振りにせんかけをすます。K君が私の余った鋼を鍛錬し包丁の火造りを2本していたので土置きをして焼き入れてベルトサンダーで荒研ぎをすます。無傷で良く出来た地金である。この調子で行けば来年の刀工試験は間違いなく合格である。刀工試験を受ける3か条。1学習能力がある事 2身体の運動能力 3手先の器用さに加え努力、工夫に真剣に取り組んでいる。妻子にかける苦労は合格する以外無し。
4月28日
朝より小雨が時折り降る曇天の空。この天気ではせんかけが出来ないので定休日出勤は止めて疲れた体を休める。風邪を引いた弟子が3人もいるがアルバイトに行けたであろうか。働きつつ学ぶことは決して楽ではないが卒業した16人の弟子は日中作刀を学び夜はアルバイトに出ていたので信念をもってやれば必ず出来る。我等には日本刀維新の使命がある。
4月27日
朝一番は私の折り返し鍛錬を3人の弟子に見せ、その後K君が玉鋼の折り返し鍛錬をするが日刀保玉鋼は強く沸かすとクラックが入り刃物には不向きと言う。4年程前まで製鉄所で鋼を造っていたので鋼の性質を調べるプロの製鉄マンの言葉には重みがある。4人の弟子の中では1番の努力家であり来年の刀工試験を目指し猛練習中である。他の弟子もK君に続き刀工になって欲しい。
4月26日
弟子2名が私の鍛錬用の梃直しをしているが刀工試験を受けるのに必要な3条件が揃っていない為に最後は梃を台無しにしてしまった。修行年数から言えば技術力が全く無いので頭を悩ます。刀鍛冶になるのには必死の修行がなければ刀工試験に合格しない。明日はもう1人の弟子に折り返し鍛錬をさせてみる事とする。
4月25日
朝から弟子3人が交代で折り返し鍛錬の練習をして、午後に香港の大学院から学生20人が日本の伝統文化を見学に来るので張り切っている。午後は火花を散らして向槌を打つ工程に歓声が沸き、香港人も向槌の体験をして満足する。その後もフランス人が訪れ、明日もヨーロッパから10人余りが来訪予定。連休も始まり問い合わせが多くなる。
4月24日
定休日の朝は山歩きをしながら刀工を目指す弟子達の事を考えながら歩く。刀工になる条件は3点有り。第1は学習能力がある事。第2は身体の運動能力がある事。第3は手先が器用である事。以上の3点が揃わなければ刀工試験に合格する技術が身に付かない。
4月23日
曇天でせんかけは出来なく、午前中は自転車で溝に転倒したW君を市民病院への送り迎え、当分作業は出来ない。午後は元製鉄マンのK君が日刀保玉鋼を夕方まで積み沸かしの練習。製鉄会社を辞めて子供も生活も全て妻にまかせ背水の陣で本物の日本刀造りに取り組む。この様な熱意ある青年に日本の文化、伝統を守って欲しい。現代の製鉄経験も有るので日本の砂鉄で刀を造って欲しい。K君を見ていると50年も昔の私たち夫婦を思い出す。妻に応えるためにも不屈の信念を持って頑張って欲しい。
4月22日
昨日は快晴であったが今日は曇り。薄暗い仕上げ場にライトを照らした位ではせんかけがしずらい。手づちで打った刀の表面をせんで削り高さを揃える作業は外の太陽の光が入らなければ出来ない。弟子が自転車で転んで手を切った様だが骨折もなく大きなケガでなくて良かった。
4月21日
快晴の中家族3人で鉄の祖神金屋子神社の春の大祭に参拝。今だ技術不足の刀工、弟子達が1日も早く刀を造る事が出来、戦後GHQによって武士の魂がアートとしてはこびり使えない似て非なる刀と刀工によって刀工会は混濁の中にあり我が一門が日本刀の維新を行うには各々が命懸けで鍛刀に取り組まなければ日本刀の維新はない。弟子達がその精神を悟り実践出来るや否や。刀造りは金屋子様に祈って砂鉄からの玉鋼造りを日本産砂鉄を用いなければ本当の日本刀は出来ない。
4月20日
今日も弟子4人の折り返し鍛錬の指導をして夏場に脇差を火造り、焼き入れ、研ぎ、中心仕立て迄の作業を行う準備。昨年と同様に今年の夏も暑い様なので夏は鋼の沸かしはしない事にして急ぐ。私も刀2振りと短刀1振りのせんかけをすまし4月末には焼き入れを終わりたい。昨年の心臓病の入院で注文刀が多く残り弟子の指導も負担になる。
4月19日
季節外れの暑さだが流れる汗をものともせずに弟子は折り返し鍛錬を交代で続ける。私の玉鋼は日刀保玉鋼の様に同一の砂鉄ではなく複数の異なる成分の砂鉄の玉鋼なので部分的に炭素量が違うので沸かしの温度に失敗すると地金の働きが出なくなる。この沸かしの温度は口では言えなく私の沸かす火花と取り出した時の鋼の色を覚える事が大事である。全員が良く研究と努力をしてもらいたい。
4月18日
弟子4名と刀工2名の総員6名が集い本物の日本刀造りの一門の輪が動き出す。自家製小型たたら製鉄を以ってだれが努力、工夫をして世に復古刀を出せるのか、年齢や経験は問わない。今全員に求められるのは命がけの修行である。
4月17日
先日より両膝が痛むので定休日の山歩きは中止して自宅で休む。弟子も1名増え指導と作刀も忙しくなるので十分休みを取り体調を整え心臓の早期回復を計らねばならない。弟子も自分の人生をかけて4名が入門しているので親方もそれに応じて自己の研究を高め、又弟子も努力をしなければならない。御互いが努力、工夫をしなければ古刀にせまる地金の働きのある刀は出来ない。それが折れず、曲がらず、良く斬れて地金の美しい本当の日本刀である。明日からは新人W君の第1歩が始まる。御互い真剣勝負の毎日でありたい。
4月16日
本日山梨県から工業高校を卒業した18歳の若き青年が刀工を夢見て入門する。5年間の修行をして文化庁のテストを受け、さらに2年間プロの刀工になる修行をするので独立迄7年間を要する。頑張って独立する事が両親に対する最高の親孝行であることを胸にきざんで毎日を過ごして欲しい。
4月15日
以前に私の包丁を購入して頂いた方が遠くより私の心臓の悪い事をブログで知りわざわざ御見舞いの品を携えて来所頂き弟子達の育成や日本刀の文化について御話をする。刀工生活についてブログで発信しているので毎日100人程の方が見て土・日曜日の見学や、注文刀や弟子入門、包丁の製作等のメールを頂き改めてブログの大切さを思う。年齢も78歳となり体力も落ちているので体を大切にして日本刀の本質を守る若き弟子育成に身を削らなければならないし、古い昔から続いた製鉄の技術をもって生活に欠かせない江戸時代まで続いた日本刀包丁の技術も残さなければならないと思った1日でした。本日は御見舞いを頂き有難う御座いました。
4月14日
今日も太陽の光は届かず薄暗い仕上げ場に投光器を入れ替えてせん、やすりがけの1日。刀2振りと短刀1振りの仕上げなので4、5日位続きそうである。雨が降らないので庭に植えたしだれ桜もまだ散らず愛犬の墓の上に枝をたらし時折花びらが舞う。
4月13日
昨夜からの雨はまだ続く曇天の空。2日間に渡る弟子の折り返し鍛錬指導も終わり2階の仕上げ場で刀のせんかけを行う予定であったが室内は投光器を付けてもまだ暗く明日に延期して居間で横になり物思いにふける。庭のしだれ桜も雨に耐えて今年は桜も長く楽しめる。
4月11日
弟子3人の折り返し鍛錬の指導日。どの弟子にも私の沸かしを見せているが鋼の沸いた時の火花が判らなくて鋼を燃やしたり、鋼が沸かないのに叩いたり、ほぼ私と同じ温度で鋼を沸かす弟子もいる。仕事が出来る、出来ないの差は一体どこから来ているのかと考える。もって生まれた器用さだけではないと思う。そこにはどうしても刀鍛冶にならねばと思う情熱の違いではなかろうか?背水の陣で臨む真剣勝負の心意気か?
備前長船日本刀製作所
岡山県瀬戸内市長船町長船93
TEL 090-3377-2138
FAX 086-958-5080
上田祐定