日中の暑さを避けて早出。11時迄に6寸2本、5寸1本の包丁を素延べ。昼食後直ぐに火造り、焼き入れを行ない5寸包丁は山田君が火造り。今日は右手の調子も良くなりもう1週間程すれば刀造りに取り掛かれるのではないかと思える程火づくりが上手になってきた。朝夕のリハビリの成果が出てきたのか。右腕はまだ小さいが訓練を重ねて行けば元通り大きな腕となり刀造りも楽になる。早く刀造りをしたいものである。
右手握力回復の為昨日は重ねの厚い包丁を打ち続けたので肩が痛み休日出勤は止めて1時間の山歩き。せめて1週間に1度の山歩きは続けて体力が落ちない様にしたい。弟子もまだ3人もいるので卒業迄は元気でいたい。今回の親指の筋切断で3か月も体力のいる刀造りを休んだので体全体が弱っている。横たわりながら残された人生を考える。
朝の涼しい時間帯に鍛錬をすます。午後は意識して重ねを厚くした包丁の火造り、通常の3倍の厚さなので手槌で打ち続けなければならなず力の落ちた右手にはかなり厳しい作業で肩まで痛くなる。それでも早く刀仕事に復帰したく夕方近く迄かけて2本の包丁の火造り。前回と比べて槌跡が少なくなる。ついでに土置き、焼き入れ迄すます。手術して癒着した筋が少しはがれだしたのか傷跡が痛む。
九州砂鉄を山田君が初めて吹く。高価な松炭を使うので火力は問題ないが通常より鉱滓が多いので少し砂が混ざった砂鉄を投入して鉱滓の出を抑えたので良くまとまった大きな玉鋼が出来る。山田君は大学院まで出ているので砂が混ざれば鉱滓の出が少なくなるのを科学的に証明して教えて欲しいものである。この事は私が長年の経験から発見したもので科学的証明は出来ない。今他の弟子は休んでいるので山田君一人が鍛冶場を独占して研究しているので技術は伸びている。早く包丁造りで基礎を卒業して脇差造りに入りたいものである。槌の柄が折れているので山本君に付替えてもらったが3か月前まで刀の火造りに使っていた槌が重たくて打てない。もう少し包丁の火造りをして右腕の筋力を付けねばならない。炭焼きをしているウエダさんから映像が届く。今回は完全に炭にならず生木が残っているとの事。冬は木が眠っているが春からは木が根から水分を吸い上げているので乾燥させてから炭焼窯に入れるべし。
病院でリハビリ後鍛冶場にて山田君の折り返し鍛錬の見学。私の鍛冶場は他人に使わせるのは好きではない。雑なスプリングハンマーの使用をする弟子には2度と大事なスプリングハンマーを使わせたくない。故障をすれば私の仕事が止まる。暑くなったので氷でモーターを冷やさなければモーターが焼けて交換となる。雑な仕事で道具が痛む。最近の弟子は常識に欠けた者が多い。弟子は親方の所作を見て同じ事をしなければならなく、自分の判断で仕事をしてはいけない。こんな小学生に言い聞かせる事を大人の弟子に言わなければならない。10年も前の若い弟子にはこんな事を言う事が無かった。そこには日本の文化伝統を受け継ぐ熱い真剣さが欠けていると思う。今日の山田君の鍛錬は自前の鋼、炭なので一生懸命。
2キロの鋼を弟子が2回鍛えたがふくれだらけでどうにもならなくなった鋼を見ると心が折れる。続きを鍛えるが鋼にクラックが多数入り3センチ程の長さの割れも有り、これではもうどうしようもないと思える。昼には素延べ、火造り、右腕の力が弱いので思う様に火造りは出来ないが少しながら良くなっていると思える。刃文も良く入りベルトサンダーで荒研ぎ。本来なら2キロの鋼なら2本出来なければならないのだがやはり弟子の技術では無理がある。
朝4時早い食事を取りながら夜明けを待つ。4時45分ベルトサンダーで焼き入れをした包丁5本を研ぐ。終わりてコーヒーを飲んで皆を待つ。7時より山田君が2キロの玉鋼を2回鍛錬。炭切りの終わったウエダさんも2回折り返して昼食。午後は暑く30度となるので山田君が朝の続きをするもふくれが多く出て苦戦。あとは明日の朝私が鍛え直す事にて今日も終る。山本君も弟子が休んでいるので一人炭切り。
今日も朝6時30分より鍛錬開始。6寸包丁と3寸包丁の2本を火造るが右手の力が無いので手槌が上手に打てず槌跡だらけの火造りとなる。それでも槌跡が浅くなる。右手親指の手術痕は火造りをすると腫れて痛むがリハビリと思って打ち続けている。刀の火造りは見通しが立たないが毎日の火造りで右腕の握力も増すだろう。鍛冶場の煙突も新調したので雨漏りも無くなり火床の上の砂鉄も良く乾く。
親指の筋切断から3か月が過ぎやっと鍛冶仕事に復帰。右手握力が元に戻る事を金屋子神社の月参りに御願いする。自分の見立てでは半月も包丁造りで槌を打てば細った腕も元に戻る事と思う。
朝4時に食事をして鍛冶場へ。用意をすまし7時やっと折り返し鍛錬を開始。2キロの玉鋼を沸かしてタガネを入れて手槌で折り返すが力が入らず打てない。わずか3か月の休業でこんな事が出来なくなるのかと思う。それでもなんとか折り返して沸かしてもふくれが出た時も右手で手槌を使ってふくれをタガネで切り取る事が出来ない。火造りも右手に力が入らず思う様にならず。幸い親指が痛まないので助かる。今週は火造りがとても出来る状況ではないので折り返しと火造りで槌が打てる様に練習をするしかない。時間が経てば右手にも力が戻るであろう。3か月目の鍛錬は疲れたが楽しかった。