立春。例年の如く備前長船に流れる吉井川の濃霧の季節が始まる。弟子の造っている刀がもう切断状態に近くこれ以上進めると本当に切断して捨てる事になるので納税準備を止めて鍛冶場に出るが弟子は来ない。金持ちなのでアルバイトはしないで良い身分なので家で休む事なく出来るまで徹底して刀を造らねばならない。山本定朝の「葉隠れ武士道」に、見つけたり武士道とは死ぬことにあり死んでこそ本当の御奉公が出来るとあり命を捨てた境地になれば何事も徹底して出来るとある。この境地の精神がなければ何十年経ても本当の日本刀は造れない。親方に相談しないで勝手に作刀を進めるのでいつも失敗しで弟子の手本になっていない。我が一門は実用の維新日本刀を造っているので修業している弟子に追い抜かれる事になる。昨日修理した金床の溶接をすまして刀の心鉄と心鉄を合わす造り込みと素延べ用炭6俵を切りて今日も終る。