1階で弟子刀工の折り返し鍛錬の試験をしているので2階の仕上げ場は熱し。弟子刀工の弟子も積み沸かしの試験をしているが託児所に預けた子供が熱を出したとの連絡があり急ぎて帰る。身重の妻が働き、子供を預けてアルバイトと刀の修行をする事は大変であるがそれを承知で夫婦で助け合いながら日本の文化と伝統を守る運動に挺身する姿に他の弟子も見習わねばならない。折れず、曲がらず、良く斬れて地金の働きのある維新日本刀への道は厳しい道であり命がけの弟子でなければ務まらない。他の弟子にその気が有るや否や。
朝6時内面応力が抜けて少し曲がった刀を炭火であぶり手鎚で叩いて直す。刀身をやすりで肉むらを削り手研ぎの状態にして中心もせんで削り仕上げる。午後は中心のやすり目を入れて研ぎ師さんに出す予定であったが弟子刀工が鍛錬をする時の熱風が2階の仕上げ場に来るので弟子のな来ない早朝に残す。
定休日は熱中症予防、体力保持のため涼しくなる秋迄休む事にする。平日も朝2時間程の作業が限度。梅雨の大雨が降り外気温の低い日に鍛錬をし梅雨明けは早朝に火造りや焼き入れをして日中は火を使用しない研ぎ仕事で体調を保ち昨年の様に心筋梗塞で倒れる事の無い様にし、弟子達も熱中症にならないように気を付けねばならない。天気予報も暑い日が続くとの事で経験の浅い弟子の体調には注意が必要。
弟子が鍛えた包丁に土置きをして山梨県出身のW君に2本の包丁の焼き入れを見せる。包丁を鍛えたK君に見せる事は出来なかったが3センチ程の長さで金筋が出ており包丁として販売するには少しもったいない気がする。W君とU君は私の包丁研ぎを見て午後を過ごすがT君は風邪をひき寝込む。弟子刀工も鍛えた刀の皮鉄をU型にするのに失敗して大きなクラックを造るが後日私が直す事にして蒸し暑い今日も終る。午後は来客有りて2時間程種々の話をする。
朝1番に松炭150俵を運び入れたので弟子達も大いに使える。折り返し鍛錬と脇差の火造りで1日を終える。徐々にではあるが弟子たちの技術が上がった事が何よりもうれしい事である。
弟子に聞くと今年の刀工試験は9名が受験して2名しか合格していないとの事。今日は先日の弟子に続き残りの弟子の試験も行う。弟子達も技術の上達した者から来年の刀工試験で合格さして刀工養成所の講師にしなければならない。誰も作りえなかった刀工養成所を作り、折れず、曲がらず、良く斬れる真の日本刀を造り愛国心にあふれる青年が日本の文化と伝統を守って行かねばならなく私の人生最後の大事業と思っている。
昨夜も咳が激しく今朝は休みたく思ったが弟子の居ない定休日に磁力の無い砂鉄で造った包丁で竹と紙を切って磁力の有る砂鉄との配合を考えなければならないので包丁を研ぐ。今年の夏は暑い夏と予報が出ているので梅雨が明けると一つしかない命の元、心臓を考えると刀造りは出来ない。日本産砂鉄で1番斬れる刀は経験上兵庫県産出の千種砂鉄と思っているが数人の刀工が集めているので手に入らない。私も日刀保玉鋼の様に硬くなる砂鉄は2トンも在庫があるがどうしてもヘマタイトでは銑気が入るので炭素量低いマグネタイト砂鉄を混合して硬さを下げなければならない。先日の心臓の検査でも徐々に回復に向かっているので秋からはより斬味の良い刀を求めていくので梅雨明けまでは包丁の試作を繰り返し、刀工として独立した折収入の無い生活を支える包丁造りも弟子に教えていかなければならない。
咳、頭痛、声が出ない。とても刀の仕上げが出来る状態ではないので弟子の作業を見ながら地金の試作で造った包丁を研ぐ。元製鉄マンのK君がこの地金も鍛えた物で弟子刀工よりも上手である。もっと早く出会っていれば良かった。私も工業高校は土木課に行ったので鉄についても知識は無かった。随分と遠回りをした人生であったが刀鍛冶になるにはやはり鉄の勉強をしなければ自家製鉄の玉鋼を造る事は出来ないし砂鉄と鋼の良し悪しが判らないので鉄板の様な日刀保玉鋼で満足するのである。刀工試験も自家製玉鋼を使用させるべきである。
3日前からカゼ引きでふらつき咳は止まずノドが痛む。妻にせかされ今朝やっと病院へ。インフル、コロナは陰性で一安心。少し休まねばならない。弟子刀工は素延べをしていたがキズが出て切断。正月から刀を造っているが出来ず。これでは刀工養成所を設立しても講師に採用する事はとても出来ない。維新日本刀を目指して設立の意義が理解されていない様である。志を同じくする弟子を早く刀工試験に合格さすのが早道の様である。
久し振りの定休日に風邪で疲れた体を休ませ刀工養成所設立を考える。1番大きな問題は鋼造りと刀造りを教える講師が私1人しかいない事である。卒業した16人の弟子も実力不足。今居る弟子もまだ修行中で刀工試験を受ける資格は無し。従って大きな養成所ではなく最初は小さな所から出発すれば何とか2、3名の面倒は見れるのでそこから出発すれば初期費用も少なくてすむ。刀工試験に合格して本当に実力のある弟子を選んで講師にすれば良いので5年間位の長期予定で進める方が無理がないと思う。先ずは健康第一に無理なく進める。全国には日本の文化伝統を守り本当の日本刀を造りたい若者はいると思う。